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Blindfold
第3章 お店
お酒を飲み干したお客は、ジャケットの内ポケットに手を入れた。
中から出てきた銀色の小さなケース。
そこから名刺を出すと、今度は胸ポケットに入っていた小さなボールペンを取り出した。
カチッ
ボールペンをノックした音がやけに響いたように感じた。
サラサラと、名刺に書き込んだ彼は、
それを私に、そして空のグラスを店長に渡した。
「ごちそうさま」
「……はい」
「おねえさんは、勤務中じゃない時に連絡して」
「………」
立ち上がった彼が思ったよりも背が高くて驚いた。
返事をしないまま、私は名刺を覗き込んだ。
ダラダラと長い肩書き。
それが、どれだけすごいことなのか、私には分からない。
名前は…
「北野……ゆう…?」
「そう。北野悠(きたの ゆう)」
待ってるよ。
そう付け加えて、彼はその場から去っていった。