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Blindfold
第3章 お店
閉店後。
片付けをしながら、なんとも言えない虚しさが私を襲った。
この仕事が終わったら、帰らなきゃいけない。
その事実が苦しくて、私はスマホを取り出した。
誰に連絡しようか。
チラっと、先ほどのお客が浮かんだ。
でも違う…
面倒なことは嫌いだ。
今は探り合うことよりも、黙って隙間を埋めてくれる人がいい。
そして、私はLINEの履歴から樹を探し出していた。
「あの男に連絡すんのか?」
『この後行っていい?』そう樹にLINEした直後、背後から近付いてきた店長が私に話し掛けた。
そして煙草に火をつけるとそのままカウンターの椅子に脱力するようにして腰掛けた。
「別に」
「別にって…」
呆れているのが、表情で分かった。
「お前なぁ…そりゃあ自由だけど、声掛けられたからって訳も分からない男にホイホイついていくの、やめろよ」
自由と言いながら、説教じみている。
そんなこと、私に言ったって無駄なのに。