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Blindfold
第29章 スミレ
「あっ……えっと…あのっ…」
恥ずかしい状況を見られていることに慌てて店長を退けようとするけれどもビクともしない。
焦っていると、幸さんは奥から拓也さんの名を呼んだ。
「そろそろだと思ったけど……」
そう言いながら幸さんは部屋の中に入って店長のグラスを掴んだ。
「達也、何杯飲んでた?」
「え、えっと……一杯と、あと二口…くらい、ですかね」
グラスの匂いを嗅いだ幸さんは、「ウイスキーね」と呟いた。
「本当にバカねぇ。知ってたけど」
そして丁度部屋に着いた拓也さんは、幸さんに指示されて私たちに近寄ると「よっ」と声を上げながら店長の体を上げた。
ようやく解放されて私も体を起こして、ふぅと息を吐きながら、店長のことを見ると、グデッとなりながら眠っている姿に目を見開いた。
「え……さっきまで話してたのにっ…」
「飲めないくせにカッコつけるから」
「えっ……!? 店長飲めないんですか!?」
驚いて大きな声を出してしまい、口元を手で塞ぐが全く店長は起きる気配がない。
拓也さんにそのままソファーに寝かせられて、そのまま少しだけ頬を赤らめながら、うぅと唸って眠っている。
「昔から達也はちょーー弱いんだよ、酒」
「そうそう。ちょっとでも飲んだらこうやってすぐ潰れて寝ちゃうの」
「そう……なんですか…」
知らなかった……。
長く一緒にいて、なんでも知ってるような気になっていたけどそんなことないんだなぁと思いながら、私は店長の顔を覗き込んだ。