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Blindfold
第29章 スミレ
久々に店長の家に入って、ぼんやりと立ち尽くす。
この前店に行った時と同じ、なじみの匂いが体に染み込む。
閉まっているカーテンを開くと日の光が強く差し込んだ。
お店同様、私はここが好きだ。
きっとそれは大好きな彼の匂いがするから、なんだろう。
少しだけ片付けて、ご飯の仕込みをして…
後で葵と部屋の飾りを買う予定だから、そのための準備として壁のサイズを測って……。
色々とやるべき事柄を整理している最中、スマホがポケットの中で震えたので慌てて取り出した。
「店長……」
きっと起きたんだろう。
緊張で手を震わせながら、私は電話に出ると、スマホを耳に当てた。
「もしもし……」
「ん、あぁ……俺だ」
寝起きだからか、少し掠れた落ち着いた声が耳いっぱいに広がる。
「私店長が呑めないの知らなくて……具合とか、大丈夫ですか…?」
「………いや、俺が勝手に呑んだだけだし…、具合も、大丈夫だ」
「良かったです」と返事をしてから間があく。
電話してもらうように頼んだのは私なんだから、ちゃんと話さないと、と思って「あ、あの」と言葉を続けた。