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Blindfold
第30章 ハッピーバースデー
約束の時間。
ソワソワとしながら、飾り付けの微調整を続ける。
そろそろ帰ってくる……。
今日、うまくいけばここ数週間の頑張りが報われる、と思ったらまるで何かの発表会のような、そんな緊張感がある。
あまりに落ち着かないのでふぅ………と深く息を吐くと、それを阻むようにスマホが震えた。
「あっ……え、あっ…」
店長からの着信。
慌てて掴んで出ると、店長が「あぁ」と返事をした。
「もう家の前にいるんだけど、入っていいか」
「っ…だ、大丈夫です」
「分かった」
電話が切れるといよいよのタイミングで心臓が高鳴った。
玄関の前に立って、葵と買ったクラッカーを手に持つ。
誕生日当日でもないし、やりすぎな気もしなくないけど、今更こんなことを迷ってもしょうがない。
外で階段を上がってくる音がする。
そして、鍵が開いた後とともに、現れた店長に私は思いっきりクラッカーを鳴らした。
「うわっ…」
「おめっ…でとうございます…!」
自分で鳴らしたくせにその音にびっくりしたせいで声がひっくり返る。
クラッカー独特の火薬の匂いが立ち込めて、店長の頭にひらひらと紙テープが乗っかっていた。