この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
Blindfold
第30章 ハッピーバースデー
用意しておいたお皿にご飯を入れた私は、そのまま鍋の中のカレーをよそう。
慣れない料理で、時間がかかってしまったけど、失敗はしていないはず。
テーブルに座った店長の前に、そっとお皿を置くと、店長はそのカレーをじっと見ていた。
「……多分…そんなに不味くはない…はず、です」
「………ありがとう」
小さくそう呟いた店長は、スプーンを掴んでそのまま一口掬うと、口の中にカレーを入れ込んだ。
その様子を私はじっと見つめる。
「……うん…うまい」
「よかった、です」
少し胸を撫で下ろすけど、いまいち店長が喜んでいるのかそうじゃないのかよく分からない。
まだ不安が残る中、私はまたハッとして冷蔵庫の中からケーキを取り出して、カレーを食べている店長の前に置いた。
「あの、ごめんなさい、順番間違えました……っ」
「……………」
「本当は、ケーキのろうそく店長に消してもらってから、カレー準備してってするつもりだったんですけど……」
準備をしたにもかかわらず、緊張からか、グダグダになっている。
慌てていると、店長は座りながら、私の手首を掴んで「桜」と私の名を呼んだ。