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Blindfold
第30章 ハッピーバースデー
「あっ………」
私がやりますよ、と言いかけたところで店長は火を付けながら口元を少し緩めた。
「………こんなの、いつぶりだろうな」
「…………」
「ガキじゃねぇんだし、誕生日なんて、そんな嬉しいもんじゃなかったけど、ここまでやってもらうと、誕生日も悪くねぇって気になるな」
「良かった……です」
部屋の電気を消して、ガラにもなくバースデーソングを歌って、店長がロウソクの火を消した。
「おめでとうございます」
改めてそう言いながら、部屋の電気をつけると、店長はニコニコとしていた。
そして、そろそろ最終局面……だ。
ゴクリと唾を飲んだ私は、ケーキを切ろうとキッチンから包丁を取っている店長に、「あの……」と声を掛けた。
「ちょっと…準備するんで…っ…ここで待っててください」
「………準備?」
「はい」
「まだ何かあるのか?」
首を捻っている店長に、大きく頷いた私は顔が赤くなるのを感じた。
迷いがないわけではないけど、
ここは葵の言うことを信じてみようと思う。
「待っててください」
そう声を絞り出した私は、そのままお風呂場の方へと向かった。