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Blindfold
第30章 ハッピーバースデー
そして、すぐに財布に目線を移すとあしらうように「あっそ」と私に答える。
「信じてないでしょ」
「………」
「ほんとに、結構活躍したんですから」
「………」
「……私も、楽しかったし。後半は指名ももらえて…」
少し得意げになりながらペラペラと話すと店長は私の腕を掴んで引き寄せてきた。
「っ…ちょっ……」
「分かんねえやつだな」
チッと舌を鳴らして軽く怒った様子の店長に、「へ?」と声を上げて首を傾げた。
「お前がキャバ嬢として売れるのかどうかは関係ねぇ」
「…………どういうことですか」
話の展開が分からずに顔を顰めると店長は「ばーか」とまるで子どものような言葉を私に浴びせてきた。
「お前みたいな無自覚に隙だらけのやつが愛想振りまくと勘違いする男がたくさん寄ってきて、危ねぇから…やめとけってことだよ」
……なんか、心配してくれてた?ってことなんだろうか。
そうなら『向いてない』とか言わずそう言ってくれればいいのに。
そして…
「……私…隙だらけですかね……」
正直、私はそういうタイプの人間ではないと思う。
鈍感てわけでもないし、天然てわけでもないし…
「だから『無自覚』って言ってんだ」
ポリポリとアゴのヒゲを掻いている店長を見ながら「radice」での日々を思い出す。
悠は置いておいて、他のお客で変な人はいなかったし、本当に普通に接客できたと思ってたけど。