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Blindfold
第30章 ハッピーバースデー
「…………誰にも…触られたくない…とか、自分だけに笑って欲しいとか…」
「………」
「店長もそういうこと、思うんですか…っ…?」
ゆっくりと顔を上げようと思ったところで、それを阻むようにして店長が私の頭に手を乗せた。
「………ガキじゃねぇんだから、束縛するつもりはねぇし、お前が好きなようにすればいい」
『ガキじゃねぇんだから』っていうのも、もしかしたら店長の口癖なのかもしれない。
普段なんの気なしに聞いてきたけど、今聞いてみると少し強がっているようにも聞こえた。
「ただ、そういうこと思うのかって聞かれたら……そりゃ……まぁ」
歯切れの悪いセリフ。
「………意外と、かっこ悪い」
私の言葉を聞いた店長は私の頭から手を下ろす。
チラと店長の横顔を見ると、小さくため息を吐きながら自身の頭を掻いていた。
「悪かったな」
途端に少年ぽくなった店長が愛しい。
私にとって、店長は大人で、余裕があって、かっこよくて、優しくて……
ある意味完璧な人に見えていて、負い目を感じるほどだったけど、そんなこともないことが分かって、何だかとても安心していた。
「……よかったです」
「……………」
「店長も……私と同じなんですね」
思わず口元を緩ませて笑うと店長は眉を寄せて私の顔を覗き込んできた。