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◇なななの短編◇
第12章 なぁなぁな2人
まだ乾ききっていない智の髪。
それが毛先でゆるゆるとカールしている。
特段美人、という訳ではないのに、見ていてかわいくて仕方がない。
もぉ……と呟きながら、立ち上がった智は、充電器に差していたスマホを取って、画面を開いた。
「ともちゃん……」
そんな智を見ながら、樹はビールを再び掴んで一口飲む。
「んー?」
「そういえばさ」
「うん」
「今日、合コンって言ってたけど」
「……あ〜…うん」
「……どうだった…?」
樹に言葉に、智は耳をぴくりと動かす。
そして、スマホをロックしたあと、しばらくその暗い画面を見つめた。
「……一人、連絡先交換しただけ」
「一人…?」
「うん」
顔を上げないままの智を見て、樹はへぇ…と言葉を洩らす。
嫉妬とか、独占欲とか……
そういった感情に、樹は慣れている。
智から合コンの話を聞いたら、そうした既知の、ドロドロした感情が湧いてくるかと思ったが、そうではない事に樹自身、驚いていた。