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◇なななの短編◇
第12章 なぁなぁな2人
名前の無い、なぁなぁな関係。
それは、嫌じゃないし、むしろ心地よい。
だけれども、ちょっと今は変な雰囲気だ。
「樹くん……」
「何…?」
首を傾げている彼を見て、智は微笑む。
「駆け引きとか……めんどくさくない…?」
「………………」
「嫉妬…するとか…しないとか…。そういうのを探るの、私、あんまり好きじゃない」
「……う……ん」
「……というか…もうそういうのしたくない」
そう言いながら、智は、樹の手に触れた。
長く続けていた智の以前の恋は呆気なく終わりを見せた。
大好きで仕方がなくて、最初は息をするのも辛かった。ずっと一緒にいたかったから、がむしゃらに彼の気を惹き付けて、耐える時は耐えて……
『青春』という言葉で片付けることもできる。
安らげなかったあの感覚を『甘酸っぱい』と表現してしまえば、そうなるのかもしれない。
でも……
ナンパで出会った彼…樹は……
一緒にいて、違和感がなくて…
今のように、言葉にし難い気に揉むようなこともあるけれど、それでも、こうやって面と向かって言う事ができる。