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◇なななの短編◇
第12章 なぁなぁな2人



智の言葉に樹は目を見開く。



握られた手。


その温かな感覚。


ゆっくりと手を開いた樹は、フッと笑ってその手を握り返す。




「確かに」




なんとなく…



雰囲気と、最低限の言葉で、言いたいことが通じてしまう。




「そういうの…俺らに合わないよね」


「……うん…」


「ごめん……」



謝りながら自然と笑みが零れる。




今まで、樹はずっと想いを寄せていた幼馴染みと嫉妬にまみれたセックスしかしてこなかった。


自分以外の男の名前を呼び続ける彼女。


自分の存在を消さなければ…



そうしなければ、彼女を抱くことも出来ず、また抱いたところで終わってしまえば言い様もない虚しさが体を駆け抜けた。


このまま続けていれば何かが変わる…


あるいは変わらなくても彼女と体を交わらすことが出来るなら…



そう思っていたはずに、結局自分を押し殺すことは堪え難くて───…



でも……



ナンパで出会った彼女…智は……



一緒にいて、心地が良くて…



少し変な空気になっても、逃げずに今のように言いたいことをぶつけてくれる。



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