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余熱
第11章 横切る

「はーちゃん、はーちゃん、」
「…ん…?」
わたしのことを"はーちゃん"と呼ぶのは、ただ一人…。
一瞬で目が覚めた。
「…わっ、お父さん!何でいるの!
勝手に入ってこないでよ!しかもスーツで!」
いかにも今仕事から帰ってきましたと言わんばかりに、
スーツからはお父さんの会社の臭いが漂ってきた。
わたしはこの臭いがあまり好きではない。
「何でいるのってひどいなぁ。
はーちゃんが学校休んだって聞いたから、急いで帰ってきたのに。
あ、何か飲む?
…って、たぶん今お茶しかないけど…。」
「外の空気吸ってくるついでに、コンビニで買ってくるからいいよ。
だからお父さんはさっさと着替えて、この部屋、ファブリーズかけといて。」
わたしはお父さんにそう言い放ちながら、ようやくベッドから出た。
少し和らいだが、まだ腰が重たい。
「ちょっと!わたしも着替えるんだから、早く出てってよ。」
思春期だとか反抗期だとかぶつぶつ言っているお父さんを部屋から追い出してから、
引き出しの一番上にしまってあった服を着て、コンビニへ向かった。

