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余熱
第12章 告げる
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長岡さんとわたしは、やがて住宅地の一角にある小さな公園へと行き着いた。
そして彼女はわたしをベンチに座らせると、ミニスカートを翻しながら近くの自動販売機へ駆けていき、
缶ジュースを2本買って戻ってきて、わたしの横に腰を下ろした。
「話してみれば、ちょっとは楽になるかもしれないから、聞くよ。」
そう言いながらわたしの手に缶ジュースを持たせた。
初めて話した時、先生への想いを言い当てられて恐いと感じてしまったからか、
その時とは対照的な彼女の語り口は、心に染みてくるように思えた。
その包み込むような優しさに促され、わたしは彼女に全てを打ち明けた。
先生と視線が衝突した時のこと、
それからわたしの体と心に降りかかった異変のこと、
先生に求められた夜のこと、
そして、祐と体を重ねても満たされず、
先生のところへ行こうとした自分に下された罰のこと。
誰にも告げたことなんてなかった。そうすることなんてできなかった。
でも本当はそうしたくてたまらなかったのだと、口に出してみてから気付いた。
とめどなく零れ落ちて止まらない涙が、それを物語っていた。
そんなわたしに長岡さんは「タオルしかないや、ごめん。」と言いながら、
バンドのタオルでわたしのぐずぐずになった目元や鼻を拭いてくれた。
「今はまだすぐに気持ちの整理ができないと思うけど、
大切なものが、失いたくないものが、そのうち見えてくると思うよ。」
長岡さんは夜空を見上げながら言った。
「祐は、
葉月ちゃんのことしか見えてないよ。
…悔しいくらい」
彼女の苦い笑顔に、
祐と一緒にバンドを組んでいて、共に時間を過ごすことの多い彼女から告げられた言葉に、心が軋む。
「ちょっと遠くにあって手が届きそうで届かないものの方が、
魅力的に見えて、追い求めたくなるんだよね…」
彼女の切なげな言葉も、横顔も、
わたしの頭と心に焼き付いたまま、しばらく離れなかった。
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