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余熱
第2章 揺れる

俺を恋愛対象として見てくる何人かの女の中に、一人だけ、他とは違った色の目を向ける女がいることに気が付いたのは、中学二年生の初夏だった。

藤 水美(みなみ)。

所属している吹奏楽部の副部長で、一つ年上の先輩だ。

俺のパートはクラリネット、彼女はフルートだった。

合奏の時は、離れてはいるが向かい合う位置に座っていた。

入部当初から、彼女の視線は感じていた。

後輩思いな彼女のことだから、と思っていたが、それが少しずつ、色を帯びていくのが分かった。

彼女の演奏技術は素晴らしく、純粋に尊敬していたため、彼女もあいつらと同じ類か、所詮女など…と落胆し、人間不信に陥りそうになった。

しかし、どうもその色は、例の下心の表れではないようだった。

あいつらとは違って、もっと深くて、明度も彩度も低い色ーー。

疑問が確信に変わったのは、ある夏の夕べのことだった。
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