この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
余熱
第2章 揺れる
俺を恋愛対象として見てくる何人かの女の中に、一人だけ、他とは違った色の目を向ける女がいることに気が付いたのは、中学二年生の初夏だった。
藤 水美(みなみ)。
所属している吹奏楽部の副部長で、一つ年上の先輩だ。
俺のパートはクラリネット、彼女はフルートだった。
合奏の時は、離れてはいるが向かい合う位置に座っていた。
入部当初から、彼女の視線は感じていた。
後輩思いな彼女のことだから、と思っていたが、それが少しずつ、色を帯びていくのが分かった。
彼女の演奏技術は素晴らしく、純粋に尊敬していたため、彼女もあいつらと同じ類か、所詮女など…と落胆し、人間不信に陥りそうになった。
しかし、どうもその色は、例の下心の表れではないようだった。
あいつらとは違って、もっと深くて、明度も彩度も低い色ーー。
疑問が確信に変わったのは、ある夏の夕べのことだった。