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余熱
第2章 揺れる
午後七時半ーー。
俺は音楽室に忘れ物をしたので、学校へ忍び込んだ。
急いで四階の音楽室まで向かうと、運動が決して得意ではない俺は息切れをし、音楽室の扉のすぐ手前で立ち止まって呼吸を整えた。
やがて落ち着き、扉の取手に手を掛けようとした時だった。
先ほどの自分のような息切れが聞こえた。
音楽室の中からだ。
扉の小窓を恐る恐る覗くと、ピアノの椅子に誰かが座っていた。
部屋は真っ暗で、人影の存在しか認識できない。
すると、その聞こえてくる声が色を帯びた。
ーーこれは…
…俺も一応思春期の男子だ。
そういうことに興味を持っていないことはなかった。
目を凝らして覗いていると、さらに声が聞こえた。
「はぁっ…んんっ…気持ちいい…」
その艶めかしく上ずった声は、藤先輩の声だった。
自分の知らない淫らな彼女に興奮を覚える。
小窓から見える、揺れる人影から目が離せなくなる。
誰とーー?
おそらく、彼女の秘部を愛撫しているであろう相手を認識しようとすると、
「あぁっ…高田くん…っ」
ーーえ……?
今、何て……?
思考が停止する。
心臓が、扉の向こうの彼女に聞こえてしまうのではないかと思うくらい、大きく鳴って、体が ぼっ と音を立てて燃え始めた。