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余熱
第4章 滲みる
「…今の、彼氏?」
祐との通話記録をぼんやり眺めていたわたしは、ドアのすぐ側から発せられたその声に、また過剰に反応してしまった。
ーー声が…違う、さっきと。
電話の時の声だ。
二人きりの時の声だ。
「…いえ、そんなんじゃありません。」
「そんなんじゃなかったら、何?」
先生はこちらにゆっくり歩み寄りながら、問い詰めてくる。
何でもいいじゃないですか!
そう反論する言葉は喉元まで来ていた。
でも、先生の方を向くと、たちまち言えなくなった。
眼鏡の奥の切れ長な眼差しに、あっけなく捉えられてしまったから。
あの時、初めてこの視線を見た時の感覚がそっくりそのまま蘇ってくる。
「…お、幼なじみ、です…っ」
途切れ途切れに振り絞った言葉は震えていた。