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余熱
第1章 崩れる

祐からの連絡に気づいたのは、放課後、玄関で祐を待っていた時だった。

いつもなら祐の方がわたしを待ってくれているのに、今日はいつも祐が寄りかかっている柱にその姿はなかった。

珍しいな、と思いつつしばらく待ったが、祐は来ない。


――もう、せっかく話したいことがあるのに。


だいぶ待った気がして、時間を見るためにスマホを開くと、メールが届いていた。

祐からだった。

“ ごめん。
じいちゃんが亡くなったから、今日昼で早退することになった。
だから今日一緒に帰れないし、明日の夕方まで帰ってこれないから、今日の夕食、明日の朝食、登下校一人にさせてしまうことになる。
あと今日塾だよな。帰る時夜道気をつけろよ。
心配だから、面倒かもしれないけど、ちょくちょく連絡入れてほしい。
ほんとごめんな。
今度出るスタバの新作奢るから。”

それは昼休みの時間に届いていた。

沙月と語り合っていたからか、全然気がつかなかった。

わたしはスマホを閉じてポケットに入れると、とぼとぼと歩き始めた。

こういうことがあると、祐は家族のようだけど、家族ではないのだと思い知らされる。

明日の夕方まで一人かぁ…。

…さみしい。

祐のメッセージから溢れ出る優しさが、寂しさをより募らせる。

…スタバの新作だけじゃなくて、駅前のクレープ屋さんの新作も奢ってもらうんだから。

しかもよりによって今日父は出張、母も夜勤だ。

…さみしい。

どうやって乗り切ろう。

沙月の家に泊まることってできるのかな。

いや、絶対できない。

沙月のお母さんはすっごく厳しい。門限17:00って小学生じゃないんだから。

…あ。今日は塾だ。

まぁ少しは寂しさを紛らわすことができそうだ。

そういえば、今日から数学の先生が変わるんだっけ。

前の先生は手際が悪すぎて、数学の得意なわたしはいつもイライラしてしまい、あまり好きになれなかった。

新しい先生はどんな先生だろう。

わたしが通う塾の先生達はおじさんおばさんばっかりだから、若くてイケメンの先生だったらいいなー、なんて。

新しい先生は、好きになれるといいな。

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