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余熱
第5章 痺れる
授業が終わり、ついに森 葉月との“補習”の時間がやってきた。
階段を昇降する足も、自然と速くなる。
ドアノブに手をかけ、扉を開けようとしたその時、
「…もしもし、祐、あのね…」
ーー“祐”…?
心なしか俺に向ける声よりも、甘く透き通った声で、呼んだその名ーー。
おそらく、男の名であろう。
そして、その声からして、彼女にとって特別な存在なのだろう。
好きな男か、もしくは、
ーー彼氏。
浮いていた足がゆっくりと地面に着いていくような心地だった。
トントン拍子で事が進み、完全に彼女を自分のものにした気になって、思い上がっていた。
これからだって、正直少女漫画にありそうな甘いシナリオを想定していた。
ーーそれではいけない。
特別な存在がいようが関係ない。
たとえ彼女の心がそいつに向いていようが、知ったことではない。
俺は、体を奪ってやる。
そして、俺でしか感じられないようしてやる。
黒くて冷たくて、どこか凶暴な欲望が、静かに目を覚ました。