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余熱
第5章 痺れる

気付かれないように教室に入ると、森 葉月は通話を終え、しばらくスマホをぼんやりと眺めていた。

初めて見る物憂げで大人びた横顔が胸に突き刺さる。


ーーやはり、心は…


気付かれるまで黙って見つめていようかとも思ったが、とても見ていられなかった。

可憐な横顔は、俺が声を掛けるとほろほろと儚く崩れた。

そして、またあの時のような緋色に色づく。

彼氏かと尋ねると、そうではないと必死に答えた。

では何なのかとさらに問い詰めると、さらに必死に、振り絞るようにして、幼馴染みだと答えた。

自分はそういう声や反応に興奮を覚えるものだと思っていた。

しかし、ほんの数分前に根こそぎ変わってしまったようだった。

彼女の、電話相手へのあんな声やあんな横顔を見たり聞いたりしてしまったら、もうーー。


あの声で喘がれたら、ひとたまりもない。


あの可憐で儚げな顔を歪めて、感じてくれたらーー。


それは、あの月夜の少年の期待や好奇心によく似ていた。

そして、気付けば指示棒を持つ左手が器用に動いていた。

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