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余熱
第5章 痺れる

下川先生は、身を隠すようにして階段にちぢこまっていた。

「下川先生?」

彼女はおそるおそる顔を上げ、俺を見ると、その顔をみるみる赤くさせ、今にも泣き出してしまいそうだった。


「何してるんですか?こんな時間に、こんなところで。」


口に出してからはっと気がつく。

以前にもこんなことを言ったことがあるとーー。

あの月夜、少女をじりじりと追い詰めた時の感情に取り憑かれた。


「さ、最後の見まわりしてたら……立ちくらみがして、座っていただけです…っ」


動揺しながら応答し、階段から立ち上がろうとする彼女に跨るようにして、俺は両膝を階段につけた。

そして彼女の左手を取ってみる。

中指と薬指の腹がふやけていた。

そこを見ながら、


「…本当にただ座っていただけなんですか?」


そう尋ねた。

少しからかう程度のつもりだった。

しかし、それは彼女の何かを煽ってしまったようだった。

彼女の顔からすうっと焦りと恥じらいが消えたと思った瞬間、ネクタイをぐっと強く引っ張られた。

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