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余熱
第7章 火照る

「…ふ、その反応見て安心した。
分からないなら教えてあげる。
森さんが好きなのは、その男の人。祐じゃない。」
長岡さんは柱から離れ、わたしの顔を覗き込むようにして、続けた。
「どうりでね。
だって、あの時の葉月ちゃんの顔、火照って色っぽくて、素敵だったもん。
そういうことなら、あたしは遠慮しないから。じゃあね。」
愛嬌たっぷりの声と笑顔でそう言い、彼女は帰っていった。
茫然として立ちつくしていると、
「あれ、葉月、今日早いな。」
祐の声が聞こえた。
まさか、聞かれていた?
こちらに近付いてくる祐の表情を恐る恐る伺っていると、
「どうした?帰ろ。」
優しくて柔らかい言葉。
いつも通りの祐だった。
先に歩き出した祐に駆け足で着いて行く。
先ほどからひっきりなしに与えられていた動揺が、収まっていく。
すると、校門を出たあたりで、祐が突然手を握ってきた。
「えっ、ちょっ、どうしたの」
「まぁ、久しぶりに。」
そう言って照れくさそうに笑う祐の目元や口元にできる皺。
思いの外大きくて、ちょっとごつごつした手。
とくん、と軽やかに鼓動が高まった。

