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余熱
第8章 欲する

それは、いつもより気温が高い上に、雨上がりで、蒸し暑い日のことだった。

放課後、いつものように祐の部活が終わるまで勉強をして待っていようと思ったが、

筆箱が、見当たらない。

――6時間目の時、理科室に置いてきてしまったのかも。

そう思い当たって理科室へ向かい、使っていた机の中を見ると、あった。

筆箱を取り出して、教室へ戻ろうとしたその時、





「んんっ…!せんせ…っ、だめ…!」





甘ったるい声が、聞こえた。


心臓が止まる。


理科準備室の方からだ。


その声に吸い寄せられるように、わたしは理科準備室の扉の前へと近付いた。


微かに扉が開いていた。


僅かな隙間から中を覗き込む。


その光景に、息が出来なくなる。


瞬きが出来なくなる。



薄暗い部屋の中にいたのは、

化学の先生と、


沙月だったのだ。
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