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余熱
第8章 欲する

「ごめんごめん、ミーティング長引いちゃって、」

そう言いながら玄関から出てくる祐の手を引き、走った。

「えっ、ちょっ、葉月、」


慌てる声もお構いなしに、走った。


頬をじりじりと灼くような日射しの中を、走った。


蝉が鳴き始めてうるさい並木道を、走った。


確か、前にもこんなことがあった。


小学二年生の夏休み、プールに誰よりも早く入ろうとして、祐を連れて走った時だ。


わたしたちのマンションに着いても、エレベーターは使わず階段で7階まで駆け上がった。


祐の家の前に辿り着き、

「…今日は祐の家ね。鍵開けて。」

息の乱れをなんとか抑えながら言った。

祐は何か言いたそうしていたが、息が切れて言葉にできないようだった。

そして、仕方なさそうに鍵を開ける。

また祐の手を引き、祐の部屋へ入ると、

わたしは祐をベッドに押し倒し、祐に跨った。


そして、

「ちょ、葉月、待っ、」

慌てふためく祐の口を、わたしの唇で塞いだ。
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