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余熱
第8章 欲する

「ごめんな…」
今にも泣き出しそうなくらいに震える祐の声に、胸が締め付けられる。
わたし、何やってるんだろう…。
激しい後悔に苛まれ、締め付けられた胸に亀裂が入っていくかのように、痛みが走る。
「…こっちこそ、ごめん…」
そう言ってわたしは起き上がった。
どっと一気に疲れが押し寄せた。
「今日は帰るね。」
そう告げたわたしに、祐は「うん」と小さく答えただけだった。
わたしは祐の部屋を出て、玄関へと続く廊下を歩く。
果たして、この家の廊下はこんなに長かっただろうか――。
隣の自宅に戻り、自室のベッドに倒れ込む。
やがてスマホを取り出し見つめるのは、
着信履歴に残る、ただ一つの登録されていない番号。
――ああ、まただ。
この頃、無意識のうちにその番号を見つめてしまう。
先ほどまで祐のことで胸が張り裂けそうになっていたというのに、
すぐに先生のことを考えられる自分が、忌まわしくてならなかった。
――――ブーッ、ブーッ…
手の中でスマホが震え、はっと目を覚ます。
どうやらそのまま眠ってしまったらしかった。
画面も見ず、慌てて電話に出る。
「もしもし、」
聞き覚えのある甘い声が、不意に耳に注ぎ込まれた。

