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HOTEL・LOVE
第17章 運命の悪戯
「おい、どうした?具合悪いのか?」



帰宅した亮太は妻の異変にちゃんと気づいてくれた。



「なんだか吐き気がして、少し熱もあって。

 だからまだご飯の支度してないの・・」



キッチンはきれいに片付いたまま。

帰りにスーパーで買ったものも袋に入ったまま

テーブルの上に置いてある。



「そんなこと気にすんな。食欲は?

 そうだ、オレがおかゆ作ってやるよ。

 あ、卵入れておじやにしたほうがいいかな」



亮太は棚の中をさぐり、小さな土鍋を取り出し、

冷蔵庫の中をのぞいて卵があるのを確認している。


このやり取りはごく普通のことかもしれない。

でも今の香澄には、嬉しさと辛さが同時に押し寄せてきて、

どう反応したらいいのかわからなくなってきた。

だからきっと、涙が流れだしたのだろう。


必死に涙をこらえようとしているのに

次から次からとあるれる涙を指で拭う。

それを見た亮太は具合の悪さの表れだと解釈した。



「ほら、横になってろよ。泣くほど辛いんだろ?

 おじやできたら持っていくから」



キッチンに向き直る亮太の背中に、

香澄は手を合わせて詫びた。
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