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悪戯な思春期
第2章 重ねた王子様は微笑んで
西が前を走っている。
横顔は瑠衣の若い頃そのものだ。
こんな錯覚はしてはいけないかもしれない。
西は西なのだ。
西雅樹という人間なのだ。
瑠衣じゃない。
(ごめん西……でも今私滅茶苦茶嬉しい)
駅に着き、西が手早く切符を買って電車に滑り込んだ。
二人とも暫く呼吸を整え、それから空席を探した。
まだ西が手を握っていたが、嫌な感じは無かった。
休日の混雑を予想したが、車内は比較的空いていたので、進行方向に平行な座席を選び座る。
当たり前だが隣同士だった。
「大丈夫?」
ふと西が心配そうに声をかける。
「余裕」
私は何故か負けん気になって答えた。
(まだまだ弱みを見せる気ないんだから、瑠衣ジュニア君)
しかし、西とは何者なんだろうか。
いちいち瑠衣を連想してしまう仕草。
俺様な態度。
M宣言の衝撃など薄れるほどに私は彼に夢中になり始めていた。
恐ろしいくらい容易く。
瑠衣に恋に墜ちたときのように。