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悪戯な思春期
第2章 重ねた王子様は微笑んで

 瑠衣に出会ったのは八年前。
 その頃は派手な彼の姿に恐怖すら感じたのを覚えてる。
 悪魔。
 漆黒の両翼を揺らし、空気を貫く声で歌う彼は、正しく悪魔そのものだったから。

 再会は五年前。
 中学二年でパソコンに興味が出てきた頃、友人の家でいじらせて貰ったとき、彼の動画にたどり着いた。
 瑠衣は、悪魔から魔王と化していた。
 肩まで伸びた髪を舞わせ、黒く染めた唇で笑う。
『心臓まで食べてしまおうか』
 そんなキャッチフレーズが似合うのは彼だけだった。
 通算三枚のアルバムはどれもメガヒットを飾り、V系の見方を変えさせた人物だ。
 そして中学三年の頃は空前のV系ブームが巻き起こっていた。
 クラスの男子も町行く男性も前髪を垂らして、メイクに手を出した。
 瑠衣に適う訳ないのに、と私は内心馬鹿にしたものだ。
 シングル『gilty』こそが、私と瑠衣を結びつけた運命の曲だった。
 そのPVは戦争の終わった荒野で武器の山の跡をひたすら歩き嘆く瑠衣を表していた。
 確かその頃三十二歳だった瑠衣はしわ一つない美貌で、重いメッセージを見事に伝えきった。
 CDを買い始めると、食費を抑えねばならなくなった。
 政府からの補助金だけではどうにも贅沢は出来ない。
 それでも両親の不在を恨む気はさらさらなく、体重を減らしても瑠衣に聴きしれた。
(瑠衣の誕生日……瑠衣の生い立ち……瑠衣の好きなもの嫌いなもの)
 恋に恋する高校生になっても、私の注意は瑠衣にだけ向けられた。
 誕生日には手作りのクッキーを贈り、年賀状が来るのを心待ちにした。
 人生全てのエネルギーを瑠衣を知ることだけに捧げたかった。
 同性との恋愛疑惑も瑠衣なら許されると、勝手に考えたりした。

 カラオケは友人と行きづらくなった。
 誰も瑠衣の曲は女子が歌うものだと思わなかったのだ。
 いつも気まずい中、それでも大画面の瑠衣のPVに心踊らせた。
「椎名っていうん? 瑠衣好きで有名な」
 美伊奈は確か小学校の後半に親しくなった。
 一緒にライブも行った。
 叫びまくっても泣いても引かなかった。
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