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悪戯な思春期
第2章 重ねた王子様は微笑んで
gilty程の大作は少ないものの、瑠衣は既に世界ツアーを行う大物アーティストとなっていた。
本気でアメリカにでもライブを見に行こうと思ったが、パスポートの発行が孤児には面倒だった。
迎えた今年の新春番組は総ナメし、瑠衣がいないチャンネルなどなかった。
鍛え上げられた体と、大衆を引きつけて離さないルックス。
彼は最強と呼ぶにふさわしい人だ。
「好きな人いる?」
「瑠衣」
「現実で、だよ~」
「なに? 瑠衣は生身の人間ですけど」
「手の届く範囲の話」
そんなもの考えるのは大学生になってからでいい。
手の届く範囲に瑠衣はいない。
そう思っていた。
「着いたぞ」
うたた寝していたようだ。
軽井沢の新鮮で冷たい空気が車内に吹き込んでくる。
寝ぼけた頭で隣に西がいる理由を考えながら、二人は降りた。
相変わらず西は手を握っていた。
「……手」
「何?」
西は冷静に振り返った。
私は瑠衣にしか見えない彼に抱きついてしまった。
勿論腕を絡ませる程度だが。
「……動き辛くないか」
「いいじゃん……こうしても」
夢みたいだった。瑠衣に触れてる。
周り中が嫉妬している。
しかし、彼は西雅樹。
忘れてはならない。
ゆっくりと二人はショッピングモールへ続くレンガ道を歩いた。
電車の移動は三十分程度だったため、会話らしい会話もしなかった。
実際こうして二人という状況を把握すると違和感極まりない。
そもそも西は昨日私が殴ったことは、きれいに水に流してくれたのだろうか。
高い彼の頭は何を考えているか汲み取れない。
(怒ってんのかなぁ?)
暫く歩いて、二人はアンティークショップに入った。
可愛らしいものではない。
一言で言えば、ロックな店。
私の趣味だったが、ついてきた西がどう思ってるか気になる。
早速瑠衣のツアー中の衣装を思い出しながら雑貨を吟味する。
髑髏の腕輪。
十字架を繋げたネックレス。
竜が絡みついた指輪。
どれも女子高生が好んで買うものじゃない。
しかし、目を輝かせて色々つけ試す私を、店員は同士だとでも言うように、気さくに接してくれた。