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悪戯な思春期
第5章 キャストの揃ったお城
「バス……ケ?」
「ああ、やったことあんねんかって」
六年くらい前だろうか。
瑠衣がバラエティ番組に出演したとき、MCが尋ねた。
あの時の瑠衣は確か、黒のスカートと紺のブラウスだった。
声を聞かなければ銀髪の女の子だと見違える位美しかった。
「バスケットボール?」
「おぉ」
「やったことはありますよ」
「今日はな、俺と……お前とでバスケ対戦するみたいやってん」
そうだ。
敬語だったんだ。
MCの大阪出身芸人とは長い付き合いらしく、その人くらいが瑠衣にタメ口でトーク出来たという。
「あれ? 一度勝負しませんでした?」
「そんなんしてたら覚えてるやろ」
スッと瑠衣が立ち上がる。
バンドのメンバーに小さく行ってくるねと囁き、スタジオを移動した。
小さな小部屋にゴールが一つだけ置いてある。
「ルールは、えー……三点先取が勝ちやて」
聞きながらも瑠衣はドリブルを始めている。
そのしなやかな手つきを見れば、誰もが実力を想像できる。
「じゃあ……先に攻めて良いですよ」
「なんで余裕やねん」
瑠衣はブラウスの前ボタンをゆっくり外した。
白く逞しい胸が覗き、空気が変わる。
「僕のが若いですからね」
「経験も浅いってことやねんで?」
笛が鳴る前にボールが動いた。
全速力で突進してくる男の側にピタリとつき、長い左手でドリブルの一瞬の隙を突いた。
次の瞬間ボールは瑠衣の手に収まっていた。
「ほら、攻守交代ですよ」
「手加減無しやなぁ……」
瑠衣はその言葉にふっと微笑むと小さく膝を曲げ、ボールを頭上に構えた。
カメラが彼に近づく。
ポン。
ナニカが弾ぜるような音が鳴った。
「手加減無しってこういうことを言うんですよ」
パスっ
リングを綺麗にくぐり抜けた球は、観客の視線を独り占めしつつ地に落ちた。
続いて爆発的な喚声が湧き起こる。
私も声を上げていた。
開始四秒。
雅樹のシュートが決まったのだ。
「嘘だろ……」
「あれか? 全国行った奴って」
隣の会話がこそばゆい。
もっと誉めてって思う。
雅樹が誉められたら、私も嬉しい。
「いや……」
「あ?」
「おれが聞いたのはさ、瓜宮って奴なんだけど」
ピイッ
笛が鳴る。
私はぼうっと瓜宮を追いかけた。
全国に行った。
雅樹と……戦った?