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悪戯な思春期
第1章 テレビの向こうの王子様
「好きな奴いなきゃ意味ないじゃん! てか誉められるのとか苦手だし」
「やっぱりMだ」
「どこが!」
「西君に責められて嬉しかったんでしょ? 瑠衣様のキャラに骨抜かれてるんでしょ? 否定できる?」
「……出来ません」
私は負けを認めて、会計の札を持った。
喫茶を出て、二人で駅に向かって歩きながら延々としゃべった。
マフラーにコートを着込んだ今は春風など気にならなかった。
「この間瑠衣がさ、司会者イジメしててさー」
「見た見た。『君って顔は綺麗だけど、僕の扱いは下手だね』って。なんかドキドキした」
「だから普通はドキドキしないって」
「あとさ美伊奈、ライブのときも『今夜僕に抱かれたいなら、ステージに登って来なよ。一番にはキスしてあげる』って言って警備員に地獄の一日を送らせたんだよ。こう、二万人のファンがグワってステージに襲いかかってさ」
「あんたなんか真っ先に走っていったでしょ? 警備員とかお構いなしに」
「そこまで大胆じゃな……お」
「どしたの?」
不自然なトーンを素早く感じ取った美伊奈が私の視線の先を見る。
既に駅のホームに着いていた私たちの、向こう岸という形になるが。
対岸に立つ影を見定めて美伊奈は小さく叫んだ。
「……西じゃん!」
(悪夢だ)