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悪戯な思春期
第5章 キャストの揃ったお城

 天が落ちて
 地が裂けて
 月が割れて
 海が枯れたって
 君の下に走るよ

 多分君は云うよね
 狂ってるって
 でも僕は正気だ
 正気で君に狂ってる

「まぁた、頭の中瑠衣フィーバーしちゃってるでしょ」
「うわぁ! 美伊奈!」
「あ、バレシズの片割れですね」
 なんで知ってんのよ。
 笹川をきっと睨む。
 美伊奈はニヤニヤしながら、私の背中越しに試合を眺めた。
「西くんピンチ~?」
「やめてよ、そんな言い方」
 ピンチじゃないし。
 快進撃の開始だし。
(韻踏むの好きだね)
(快進撃の開始)
(五月蝿いなぁ)
「さっき、屋上で何してたの?」
 顔の血液が沸騰する。
「なっ、なにも」
「はい、雅樹。喉渇いてるでしょ。飲んで良いよ。あーん、もしかしてコレ間接キス?的な」
「ないわ! そんなわかりやすいラブコメなんて」
 美伊奈が得意そうに笑う。
 大体は真実に一致してるけど。
「わかりやすくないラブコメはあったみたいね」
「あ」
 歓声が上がる。
 急いで振り返ると、雅樹が仲間に囲まれてハイタッチしていた。
 フリースローが入ったんだ。
 見てなかったショックに呆然とする。
 雅樹は私を見て、全てを悟ったのか意地悪く微笑んで指を差した。
 後で、みてろよ。
 もしくは
 お仕置きだからな。
 的な。
(うわぁああああ)
(只今期待定数上昇中)
(定数は上昇しないよ…)
「美伊奈が邪魔するからっ」
「あら、あたしのせい?」
「ほら、先輩。また西先輩がシュートしますよ」
 パスっ。
 ゴールの音がした。
「ああああ!! また、また見逃した」
「あたしのせいにしないでよ」
 もう、なんだこれ。
 誰も邪魔しないでよ。
 雅樹が戦ってるんだよ。

 奈々宮会長は常に自分のゴールを守りについている。
 雅樹が来ると、その進路を見極めて粘る。
 ドリブルで抜けることはまずない。
 パスを回して繋ぐ。
 そうして雅樹にまたボールが戻ってくるのだ。
 順調に見えた試合だが、段々影が現れ始めてきた。
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