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悪戯な思春期
第5章 キャストの揃ったお城
「左だ! 走れ」
「西がノーマークだぞっ」
「ゴール下だ! 行け行け!」
会場に響く会長の声。
流石は生徒会長。
どんどんチームがまとまってゆく。
雅樹もやりづらそうだ。
味方にパスを回すと取られてしまう。
だから、自分が走るしかない。
でも、体力は着実に減ってゆく。
「……雅樹」
見ていてわかる。
シュートは十回以上。
フリースローも三回。
疲れてる。
それでも女子の黄色い歓声は雅樹に向かう。
いつの間にか隣のバレーが終わり、館内の全員がバスケを見ている。
ドキドキしてきた。
(関係ないのに?)
(関係なくない)
雅樹。
雅樹雅樹。
頑張って。
「奈々宮会長、体育のバスケで何て呼ばれてるか知ってます?」
存在すら忘れていた笹川が尋ねる。
私は目も向けずに「知らない」と答える。
しかし、返事がないから仕方なく振り向いた。
笹川はニッと笑ってこう言った。
「追いのオフェンス。会長の本気は後半二分で発揮されるんですよ」
ピーッ。
笛がなる。
得点表が捲られる。
また相手の得点だ。
36VS40。
こちらがリードしている。
でも、四点差なんてあってないようなもの。
焦りの空気が漂う。
「瓜宮」
雅樹がアイコンタクトをする。
彼は頷き、ディフェンスの立場を抜けて駆け出した。
これには相手も動揺したようだ。
雅樹を二人が追いかけるが、瓜宮も気になる。
「マークつけ!」
奈々宮が雅樹から奪おうとついていく。
でも、もう遅い。
私はこのフォーメーションを見たことがあった。
ゴールと直角三角形を描いた二人。
雅樹が素早いバウンドで瓜宮にボールを送る。
確実に受け止めた瓜宮が立っているのはスリーポイントのゴール真正面。
フリースローの体形だ。
「打たせるなっ」
奈々宮が叫ぶが、もう瓜宮の手からボールは離れていた。
孤を描いた球は、わずかにブレて飛んでいく。
外れる。
誰もが直感した。
しかし、私は確信していた。
入る。
弾かれたボールに二本の手が伸びる。
一瞬早く、触れた手がそれをゴールに向かわせた。
縁をなぞって、球は輪をくぐる。
ダンっ。
着地は同時。
百九十の背を活かしてボールを押し入れた彼が雄たけびを上げる。
「っっしゃあああ!!」
「西がノーマークだぞっ」
「ゴール下だ! 行け行け!」
会場に響く会長の声。
流石は生徒会長。
どんどんチームがまとまってゆく。
雅樹もやりづらそうだ。
味方にパスを回すと取られてしまう。
だから、自分が走るしかない。
でも、体力は着実に減ってゆく。
「……雅樹」
見ていてわかる。
シュートは十回以上。
フリースローも三回。
疲れてる。
それでも女子の黄色い歓声は雅樹に向かう。
いつの間にか隣のバレーが終わり、館内の全員がバスケを見ている。
ドキドキしてきた。
(関係ないのに?)
(関係なくない)
雅樹。
雅樹雅樹。
頑張って。
「奈々宮会長、体育のバスケで何て呼ばれてるか知ってます?」
存在すら忘れていた笹川が尋ねる。
私は目も向けずに「知らない」と答える。
しかし、返事がないから仕方なく振り向いた。
笹川はニッと笑ってこう言った。
「追いのオフェンス。会長の本気は後半二分で発揮されるんですよ」
ピーッ。
笛がなる。
得点表が捲られる。
また相手の得点だ。
36VS40。
こちらがリードしている。
でも、四点差なんてあってないようなもの。
焦りの空気が漂う。
「瓜宮」
雅樹がアイコンタクトをする。
彼は頷き、ディフェンスの立場を抜けて駆け出した。
これには相手も動揺したようだ。
雅樹を二人が追いかけるが、瓜宮も気になる。
「マークつけ!」
奈々宮が雅樹から奪おうとついていく。
でも、もう遅い。
私はこのフォーメーションを見たことがあった。
ゴールと直角三角形を描いた二人。
雅樹が素早いバウンドで瓜宮にボールを送る。
確実に受け止めた瓜宮が立っているのはスリーポイントのゴール真正面。
フリースローの体形だ。
「打たせるなっ」
奈々宮が叫ぶが、もう瓜宮の手からボールは離れていた。
孤を描いた球は、わずかにブレて飛んでいく。
外れる。
誰もが直感した。
しかし、私は確信していた。
入る。
弾かれたボールに二本の手が伸びる。
一瞬早く、触れた手がそれをゴールに向かわせた。
縁をなぞって、球は輪をくぐる。
ダンっ。
着地は同時。
百九十の背を活かしてボールを押し入れた彼が雄たけびを上げる。
「っっしゃあああ!!」