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悪戯な思春期
第5章 キャストの揃ったお城
「おかえりにゃあ」
「休み時間丸々どこ行ってた」
私は笑ってごまかした。
まだ心臓がバクバクしている。
太腿の間は汗で濡れている。
生徒会だからこそ、行事の日にだれも来ない部屋を知り尽くしている。
それを濫用した罪悪感が少しだけ疼いたけど、無視した。
雅樹と沢山キスをした。
もっともっとしたかった。
でも、満足で溢れてる。
「……顔、にやけ過ぎ」
奈々宮がむくれながらつつく。
そういえば……私は思い出す。
会長と雅樹との賭けを。
「笹川! 早くバレーの集計して来いよ」
「あいあいさー」
「早く行け」
(うわぁ……)
(超絶テンション悪ぅ)
(誰のせい?)
(私たち)
(たち言うな)
ブンブンと頭の中の雑音を払って奈々宮の元に行く。
「あの……会長」
「天草、仕事は沢山あるんだ。早く席につけ」
「あのー」
「なんだよ、早く言え」
「顔合わせてよ、会長」
奈々宮が固まる。
資料にマークを点けていた手から目線を外し、こちらを見る。
そして、鳥肌が立った。
男子の表情は予想がつかない。
会長は、眉をしかめ、悔しそうな顔をしていた。
その感情を押し殺すように、歯を噛み締めて。
目だけはハッキリと、その悔しさを訴えてくる。
あぁ、この人も本気だったんだ。
そう思わされる。
「……なんだ」
じっと見つめすぎた。
私は俯いて、何を言おうとしていたか思い出す。
でも、言えない。
雅樹の二回戦を見てくるなんて、言えない。
会長は断らないだろう。
だけど、それは断れないだけ。
私はそれを知っている。
断れないと知っていて頼むほど残酷なことがあるだろうか。
本部席からなら見える。
それでいい。
「長く席外してスミマセン」
「いいよ、別に」
「はい」
隣に座る。
トーナメント結果を書き込んでゆく。
「……天草」
「はい?」
二分位して、会長が言った。
「もうすぐ、生徒会も終わるな」
「ですね」
手を止めずに相づちを打つ。
「椎名って呼んで良いか」
「ですね……って、え?」
顔を上げる。
奈々宮がじっと見ている。
真っ直ぐに。
笛がなる。
雅樹の試合開始だ。
悔しい。
こんなことなら私が先に言えば良かったんだ。
断れない頼みするなんて。
「い、いですよ」