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色絵
第2章 入門
先生の筆使いを見る。
色を完全に混ぜる時もあれば、筆に二種の色を付け、筆を捻りながら、色付けすることもある。

筆も一筆で色を入れたり、重ね塗りしたりと色々だ。
花びらが1枚ずつ色付けされていく度に、より立体的に奥行きが表れていく。

実物より生き生きとして、命が吹き込まれていく。

先程、見て感じる人がいて、絵に命が吹き込まれると先生はおっしゃったが、色付けの時点で命は吹き込まれていく。

吹き込むというより、先生の命を分け与え、注ぎ込んでいる。
先生の儚げな印象は、実際に絵に命を削り込んでいるからではなかろうか。
それほどまでに、薔薇は美しいのだ。

最後に、手前にあるワタシが最初に塗るだろうと答えた花びらが色付けされる。

一輪の花が仕上がる。
葉茎と繋がったその花が、紙から浮き出て、手に取れるのではないかと思うほどに美しく、命が溢れていた。

フゥ…
思わずためいきが出てしまう。

「ずいぶん集中してしまいましたが、貴女が描いていたみたいですね。」

先生が筆を洗いながら、微笑む。

「あっ、息が止まりそうで、思わずためいきが…」

ハハッ…先生が声を出して笑っていた。
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