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色絵
第2章 入門
着物のまま庭に出る。女物の草履まである。

「母や姉や、その他の身内の形見なんですよ。着物も草履も…
別に家は呉服屋ではないですよ?」

先生がワタシの心を読み取ってくださるので、口下手なワタシは居心地がよい。

庭を散歩して、花の名前などを話しながら他愛もない話をする。

先生もお一人で退屈してらしたのかな…

「先生って独身…」

「そうですよ。独身男といるのは危険でしょうか?」

「いえ、全然…」

「全然と言われるのも男としてどうなんでしょうか…」

「あっ…ごめ…」

「貴女は簡単に謝る。軽い冗談で流して下さいよ…

でもね。恋心がない訳じゃないんですよ。恋人がいたときもあったし、もう枯れてしまった訳でもない。

ただ、結婚しようと思うほどの縁がないまま、この年になってしまった。」

「この年って、先生、おいくつなんですか?」

「今年34になるんだけど、30過ぎたら年なんてどうでもよく、確かそのくらいだよ?って感じかな…」

一歩先を歩く先生の表情がわからず、変な話題をしてしまったなと思う。

「気にすることないですよ?年を取りたくないとか女々しいこと思ってないですし、創作意欲の源ですから…」
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