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色絵
第11章 無花果
心臓の音がうるさくなる。開ける勇気はないが、今、扉は開いているのだ。


部屋を覗く。
正面の壁に2枚の大きな絵が飾られていて、間にあの赤い着物の女がいた。

ここに引っ越したのね。

沙絵さんと沙織さんが融合した作品に話しかける。

左には恐らく沙絵さんが幼い頃の寝顔、テーブルに頬をつけて寝入ってしまったところを描いたものがあった。


右側には裸婦画が飾られている。
綺麗な女性だった。

何も纏わず、背景も一色で塗り潰されているのに、その女性の美しさだけで絵は充分華やかだった。

色絵でも情画でもなく、記念写真のような絵は、生前の沙織さんを実際にモデルにしたものだとすぐにわかった。


何故なら、その絵だけが油絵だったから…

右の壁には沙絵さんが遊ぶ姿など、沙絵さんの日常生活を窺えるスナップ写真のような絵が沢山飾られていた。

ワタシは引き込まれるように、部屋に入っていた。

手前から強い視線を感じて振り向く。

あっ…

声がでるほど驚いた。

ワタシが釈然とせず今日も此処にきてしまった理由…

先生と沙絵さんは、どんな関係なのか、


その答えが、証拠が、そこに飾られていた。
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