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可奈さん
第8章 涙
「可奈さん…」


やっぱ寝てなかった。


「あの2人、考える人とか言っちゃってバカみたい…フフッ…、昔とちっとも変わらない」

「友達っていいですよね」

「ん、久しぶりに楽しかったな」

「よかったですね」


じゃあ、ずっとその事で泣いてたのか。


「……でも、気がついちゃった」


可奈さんが足元を見つめる。


「え…」

「楽しい時間が過ぎて家が近くなると、いつの間にか、あの人の車を探してる」

「……」

「いつもそうなの」

「可奈さん…」

「お金を受け取ったのに…、なのに、ちゃんと忘れられない」


俺は今日、いったい何回失恋したんだろう。


可奈さんは袋の中からティッシュを1つ取り出すと、点線をパリッと割った。


「ちゃんと言っておけばよかった」

「なにを」

「言えば困らせると思って…」



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