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可奈さん
第8章 涙
ぼんやりと霞んだ月を見上げて、今日いちばん深いため息をついた。

ティッシュを出してごそごそと涙や鼻水を拭いてる可奈さんが愛しくてしょうがない。


どうしよう、俺
この人が好きだ


苦笑いをフンッと月に残して胸元に視線を落とすと、餌を待っている子猫みたいな瞳の可奈さんが俺を見上げていた。


「………」


あぁ

もう限界です


俺は彼女の耳と頬を両手で挟んだ。何をされるかなんて知りもしない瞳を見つめ、顔を近づけて、ポカンと開いた唇をふさいだ。


……チュッ…


「っ…、えっ…」


不意を付かれた子猫が間近にある俺の目の奥を覗き込んだ。


「今のな、なに?」


そうやってずっと俺だけを見つめてくれ…


「…俺、可奈さんが好きです」


小さな唇はすぐに閉じようとしたけどもう遅い、躰の奥から沸き上がってくる熱を抑えられない。


「ンンッ……」




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