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可奈さん
第9章 熱
部屋の前で呼吸を整えチャイムを押した。


「拓也さん、あの、ちょっと待ってね、すぐ行きます」

「はい」


あ、ピザ持ってくればよかったな。
顔を見る事しか考えてなかった。
気付けよ俺…。


ドアの向こうに人の気配を感じると、すぐに鍵を開ける音がした。


「お、お待ちどうさま」


ドアを開けた可奈さんは息を切らしている。


「どうも、こんな時間にすみま…せ…」


ドアが後ろで閉まった。


「いらっしゃい」


なぜか可奈さんは、白いニットワンピースを着ていた。


「あの…」


どうしてわざわざ着替えを?


「なに?」


慌てたように髪を両手でササッと後ろに流して笑い、足元に落ちていたレザーグローブに気付くと「あっ」と驚いてすぐに拾う。


俺がバイクじゃなかったから?





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