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可奈さん
第9章 熱
ここで堪える事に、なにか意味があるのか?

ここを出たら、もう二度とこの人に触れる事はできない。

次はない。


「帰って…」


肩が震えていた。

唇を噛んで俯く可奈さんの白い首筋にかぶりつきたい。

俺は靴を脱ぎ、可奈さんの細い肩をぐっと押して家に上がった。


「や、やだ…帰って…」

泣きそうなこの人を、今すぐめちゃくちゃにしてしまいたい。


「可奈さんっ…」

「な、泣くからね…」


それ脅し?


「いいですよ」

「………」

「どうぞ」

「………」


俯く顔を覗き込むと更に下を向こうとする。

頑固な可奈さんにじれったくなり、右手で無理やり顎を引いて唇を奪った。


「…ぅ…」


見つめ合っていた。

可奈さんのまるい目は、ナニスルノヨ…とびっくりして叫び、俺の目は、アナタヲ手ニ入レマス…と冷静に見据える。




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