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可奈さん
第11章 葛藤
「ちっ、見られたか」


ヤツがわざとらしく壁から手を離す。


「お、お邪魔しました」

「あ、違うよ、りえちゃん待っ…」


一瞬冷えた目を俺に向け、りえちゃんは逃げて行った。


「おい、どうすんだよ、お前のせいだぞ」

「ははっ…それより、さっさと白状しろよ。どんな女の子だよ、俺の知ってる子か?」

「……お前も知ってる人だ」

「え、そうなの?」


きょとんとする木田のマヌケ面。


「……も、もしかしてお前…」

「ん?」

「ナナさんか?」


ガクッ


「ちげーよ」


なぜその名を口にする。まあ、確かにナナさんとは……


「じ、じゃあユミちゃん?ヨリが戻ったの?」


胸がシクシクと痛む。


「…違う」

「じゃああの子かな、いやあの子か…、まてよそれとも……」

「お前いったい誰の事を思い出してるんだ、いい加減にしろよまったく。………可奈さんだよ」

「……は?誰それ」

「だから……、瀬川さんだよ、瀬川可奈さん」


木田は額に指先を当てて考え込んだ。


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