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可奈さん
第11章 葛藤
"たかひら"の前にバイクを停めた時、のれんは仕舞われていたけど店内は明るかった。

扉に手を掛けてみるとガラガラと開く。

ラッキー。


「あら、拓也さん」

「よお拓也」


麻由さんと修平さんが紙袋に何かを詰めているところだった。


「閉店なんですね、すみません」

「今日はちょっと早めに閉めたんだ、メシ食うか?」

「いえ、ちょっと顔を見たくなっただけなんで、すぐ帰ります」

「なんだよ水臭いなぁ。俺のこの顔でいいのか?それとも麻由の顔?
アハハ、あ、丁度いいや」


修平さんが麻由さんの顔をちょっと見た。


「拓也、頼みがあるんだけど」

「はい、なんですか?」


紙袋を持ち上げて俺に見せる。


「これ、可奈んトコに届けてほしいんだ」

「え?」

「あいつまた残業らしくてさ、ちょっと職場に差し入れしてやろうと思って。……な?」


麻由さんに目配せをする。


「そうなんです」

「今日は麻由を早く帰さなくちゃいけないんだけど、もしお前に頼めるなら……」

「俺行きます!」


行きますとも!



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