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可奈さん
第11章 葛藤
「どうだ、旨いか?」

「はい、めちゃウマです」


焼肉定食にコロッケを付けてくれた修平さんは「よく食うなあ」と言いながら隣でビールを飲んでいる。


「一見お堅く見えて実はにぎやかな美人居ただろ」

「あ、店長さんの事ですね。修平さんによろしくって。……あ、俺の事を可奈さんの弟だと勘違いしてましたよ」


ちょっと八つ当たりしてみる俺。


「アハハ、相変わらずだな瞳さんは。可奈に兄弟いないって事忘れてんのか。
あ、お代わりは?」

「も、もう腹いっぱいです」

「そうか、遠慮すんなよ」

「ありがとうございます。ところで麻由さんが早く帰るなんて珍しいですね」


彼女がいない店の中はひっそりと静まり返り、弾んだ声がしない分だけひんやりしていた。


「うん、明日麻由のお母さんが入院する事になって、準備とかいろいろ」

「え、大丈夫なんですか?」

「初期の胃癌が見つかったらしい」

「えー!」


俺はすぐに良くない事を連想した。


「初期だよ初期、手術もそんなに大変じゃないらしいから麻由もほっとしてる」



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