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可奈さん
第12章 恋というもの
柔らかなその手を握ると彼女はフフッと笑い、子供のように腕を前後に振った。


「なんか、まるで恋人同士みたいね」


ぐ……


ジャブが徐々に効いてきてスタミナを奪われていく。


「可奈さん」

「なあに?」

「俺いつも勝手にメール送ってますけど、迷惑じゃないですか?」

「いいえ、ちっとも。すぐに返信できなくてごめんなさい」


──連絡するのだって、いつもわたしの方からだった


ユミ……


せつない。
切ないってこんなにため息が出るんだな。

結局片思い?

こうして手を繋いでいるのに?

肌の温もりだって知っているのに?

この人の唇や甘い喘ぎ、汗、それから……味も……


「ねえ見て見て、月がきれい」


あなたの目に、俺はどう映っているんだろう。

え、こんな事考えてる俺って変?


「拓也さん、どうかした?」

「え」

「月はそっちじゃなくてこっち」

「あ、あぁ」


歩道のまん中で立ち止まっていた俺達は、通行人の邪魔になっていた。


「歩こっか」

「そうですね」




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