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可奈さん
第12章 恋というもの
駅前を抜けると、カラオケ店の看板が辺りを照らしていた。


「ねえアレって井口さんじゃない?」

「あー、ホントだ」


どうやらさっきの連中が場所を変えたらしい。


「拓也さん…」


一瞬離れようとした可奈さんの手を、俺はぐっと握りしめた。

木田が女の子達の間から顔を覗かせる。


「こんばんは。俺達これからカラオケなんですど、よかったら一緒にどうですか?」


隣で葉月ちゃんがウンウンと笑顔を向ける。


「えーっ、マジですか木田さん」


知佳ちゃんが声を上げた。


「ありがとうございます。でも私はちょっと急ぐので…拓也さん、私はここで…」


俺はまた手を握りしめた。


「俺、彼女を送ったら顔出すから。じゃ、あとでな」


カラオケを断ってこのまま別れたら、アイツら何を言い出すかわからない。
好き勝手な想像して可奈さんを悪く言うことだけは許さん。

絶対に。


俺はフンッと鼻息荒く、可奈さんの手を引いて歩き出した。

あわよくば彼女の肌に触れたいとどこかで期待していた俺は、潔く欲求を押さえ込んだ。

チッ…



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