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可奈さん
第12章 恋というもの
走り去る彼女の背中を追い掛けるにはロッキー並みのタフさが必要で、だから俺はその場にへたり込み、真っ暗な空を見上げて目を瞑った。


バカヤロー……





どれ位時間が経ったのだろう。

携帯を取り出し親指を動かした。


「あ、俺」

「拓也?めずらしいわね、どうしたの?」

「今度工場見に行ってもいい?」

「なに、姉さんに何か言われたの?」

「いや別に」

「そう……。もちろんいいけど邪魔にならないようにね。あ、ちょっとお父さんに…」

「親父には黙ってて、長居はしないから」

「あ、そう。今忙しいみたいだから、行くなら昼休みにしてちょうだい」

「わかった」

「眠いから切るわよ、おやすみ」

「遅くにごめん。おやすみ」


相変わらずサバサバした対応の母親にちょっと気が抜けた。

いろんな求人をあたってみても、労働条件が今イチで身体を壊しそうだった。

どうせなら俺に合ったものを。
くだらない事にこだわってる暇はない。何かを始めなければ。


「よしっ、まずは立ち上がるか」




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