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可奈さん
第12章 恋というもの
大音量で木田が歌うのは、聴いた事のない演歌だった。
画面の字幕をたどる野太い声を途中で止め「ここがコブシ!」と叫んで歌い出し、握りこぶしをグルグル回しながら悦に入る。
目をつぶって小刻みに首も振る。
怪物のうなり声は演歌もオペラも変わらない。
「木田、マイク食べんなよ」
「そんな歌しらなーい」
「私も~」
何を言われても関係ない。次も演歌を選択している。
隣に座っている葉月ちゃんはとても楽しそうで、木田がふざけて頭をナデナデすると照れながら俯いた。
マジ羨ましい両思い…
葉月ちゃんの"初めて"をまだ大事に取ってある木田は、クソが付くほど真面目に彼女が好きなんだと思う。
俺もヤツを見習いたい。
可奈さんの残したあの言葉は俺を身動きできなくさせた。
これじゃアイツを忘れるどころか思い出すばかりだ。
絶対絶命。
リングサイドからタオルが投げ込まれる寸前。
このままでは死んだヤツにノックアウトされてしまう。
くそっ!
画面の字幕をたどる野太い声を途中で止め「ここがコブシ!」と叫んで歌い出し、握りこぶしをグルグル回しながら悦に入る。
目をつぶって小刻みに首も振る。
怪物のうなり声は演歌もオペラも変わらない。
「木田、マイク食べんなよ」
「そんな歌しらなーい」
「私も~」
何を言われても関係ない。次も演歌を選択している。
隣に座っている葉月ちゃんはとても楽しそうで、木田がふざけて頭をナデナデすると照れながら俯いた。
マジ羨ましい両思い…
葉月ちゃんの"初めて"をまだ大事に取ってある木田は、クソが付くほど真面目に彼女が好きなんだと思う。
俺もヤツを見習いたい。
可奈さんの残したあの言葉は俺を身動きできなくさせた。
これじゃアイツを忘れるどころか思い出すばかりだ。
絶対絶命。
リングサイドからタオルが投げ込まれる寸前。
このままでは死んだヤツにノックアウトされてしまう。
くそっ!