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可奈さん
第12章 恋というもの
「あ、俺そろそろ帰ります」


携帯をチェックして急に立ち上がったノブ。


「なんだよどうした」

「今メール来たんで」

「ちょっと見せてみろ」

「ダメですよ、あっ、ちょっと木田さん……」


木田に携帯を奪われたノブは、取り戻そうとしても手が届かない。


「マジかよ、おいタク、見ろこれ」


流行りの歌でキャーキャー盛り上がっている女の子達を気にしつつ、俺は高く掲げられた携帯を覗いた。


──ノブりん
おまちどうさま
今夜はちょっとエッチなランジェリーで待ってマス

早くきてね ハート


ナナさん強烈……

彼女のあの肉体がチラついた。ノブを相手にいったいどんな事をして……


「ノブ、早く行け!」

「はいっ!」


木田に許されたノブは振り向きもせずにドアの向こうに消えた。

木田のひと言。


「アイツ……羨ましい…」

「なになに?」


葉月ちゃんのつぶらな瞳に「みんな歌上手だよねー」と誤魔化す木田。


男ってサイテ-だな。


「お前は行かなくていいの?」


木田が真顔で訊いた。


「うん、今ちょっと複雑で」



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