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第13章 思い込み

──拓也さんお久しぶりです。
今、たかひらにいます。
もしよかったら来てください。



よし、やった！

気分急上昇。



──すぐ行きます



「拓也君、お疲れ。今日はありがとな」


ﾒﾗﾝｺﾘｯｸからﾊｲﾃﾝｼｮﾝへと一気に駆け上がっていた俺に、現実からの「待った」がかかる。


「こちらこそありがとうございました。」

「ﾊﾞｲｸかぁ、いいねぇ。気を付けて」

「はい。お先に失礼します」


煙草を吸いに出てきた松井さんに会釈して、俺は愛車に飛び乗った。

時間を見つけて工場に顔を出し、邪魔しない範囲で手伝う。
それが日課になっていた。
よそよそしかった建物が、居心地の良い場所に変わっていく。

あと1週間もすればﾊﾞｲﾄも終わる。
何もかもそれからだ。


風の音が心地いい。
可奈さんからのﾒｰﾙが、優しい声色で耳から入ってきて嬉しい。

もっと早く連絡してもよかったな。

ﾒｯﾄに降ってきた落ち葉を払いのけ、俺は日の落ちた街道を急いだ。